- 2024.03.14
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- 家族信託
家族信託のメリット・デメリットについて
家族信託のメリットとして、五つの点があります。
一つ目は、認知症による資産凍結を防げる点にあります。認知症になると法律行為ができなくなるので、家族信託を利用することによって本人が元気なうちに財産管理を託せることができ、本人認知症になった後も資産凍結されることなく受託者主導で財産管理がスムーズに実行できます。
二つ目は柔軟な財産管理ができる点です。家族信託は委託者と受託者の契約行為です。そのため、契約上事前に決めた内容であれば、財産を自由に管理・運営・売却することができます。例えば、自宅を売却し、売却した資金で財産や収益物件を購入することもできます。また反対に資産の売却をできなくすることも可能です。本人が元気なうちに希望や方針、そのために付与する権限を信託契約書に記載することが可能なのです。これが法定後見制度の場合は家族信託のように自由に財産管理はできません。家庭裁判所の許可を得る必要があり、許可が下りなければもちろん売却することはできません。
三つ目は、遺言と受遺者の財産管理の機能を果たせる点です。本人が死亡し、成年後見人制度を利用されている場合、財産を引き継ぐ人ではなく、財産管理能力のある成年後見人に財産管理を任せることになりかねません。 家族信託を利用すれば、本人の死亡後に財産を引き継ぐ人を契約書の中で指定でき、本人が亡くなってしまった後も本人の生前、財産の管理任されていた人の下で、そのまま財産の管理が可能となるのです。
四つ目は、資産承継対策ができる点です。自分の希望する順番で何段階にも資産承継者を指定することができます。後々の遺産分割協議による家族の争いを避けることができます。
五つ目は、共有財産のトラブルが起きることを防ぐことができる点です。家族信託では、予め財産を承継する人を指定できるため、不動産などの共有者の全員の同意を得ることなく、良いタイミングで有効活用や処分することができます。
次にデメリットについてです。
一つ目に、損益通算ができなくなるリスクがある点です。損益通算とは同一年分の利益と損失を通算することですが、信託財産の中に収益不動産がある場合、不動産に関する損失は、信託財産以外からの所得と損益通算することや純損失の繰り返しをすることはできない為、無かったものとみなされるため注意が必要です。家族信託の設計に関しては税理士等に相談すべきです。
二つ目に、収益がある場合は税務署へ申告する手間がある点です。設定時や確定申告の際は申告、毎年三万円以上の収益がある場合や、信託終了時に提出書類があります。
三つ目に、認知症になる前の対策が必要となる点です。家族信託は契約であるため、認知症の症状が出ている状態ですと、公正証書を作成する際に公証役場等に診断書を求められることがあります。
四つ目に家族信託から漏れた財産は遺言書が必要となる点です。なぜなら家族信託は認知症になる前に締結するため、入れ忘れた財産やその後に生じた財産が含まれていないことがあるのです。そのため、家族信託でカバーできない部分は遺言書を作成する必要があります。
五つ目は、当事者を長期間拘束する点です。長期間に亘って制限をかけるようなことになりかねず、かえって不測の事を招くこともあります。
以上から、家族信託をお考えの場合は、専門家にご相談されることを推奨します。