お知らせ

2024.03.14
  • 家族信託

家族信託で課される税金について

家族信託で課される税金について、信託開始時、信託開始後、信託終了時に分けてご説明いたします。なお、ここでは主に相続税、贈与税についてのご説明となります。契約時にかかる印紙税や不動産の信託登記にかかる登録免許税については「家族信託でかかる費用はどれくらいか?」に記載してございますのでこちらをご参照ください。

1.信託開始時の課税について

家族信託を開始するとき、これまでの「所有者」(=委託者である親)がそのまま「受益者」になる場合(この「委託者=受益者」の形態を自益信託といいます)、実態として財産は親から移動していないので税法上信託財産の実質的な所有者は「受益者」(親)のままとなり課税は生じません(受益者課税の原則)。

一方で「委託者≠受益者」という形態も理論上あります。これを「他益信託」といいます。例えば、父親が委託者として長男と信託契約を締結しますが、受益者を母親とするケースです。この場合、母親は対価をともなわずに父親から信託契約を締結すると同時に実態として信託財産を取得したことになるので贈与税の課税対象になります。

実務上は、贈与税課税を避けるためにほとんどのケースが「自益信託」でスタートさせますので、信託開始時に課税の問題が生じることはまれです。

2.信託開始後の課税について

家族信託における税務は「受益者等課税信託」といって、信託における受益者が「受益権」という財産を持っているとして、受益権が移動したとき(受益者が変更したとき)に課税するという原則があります。つまり受益権の移動がなければ税務上の課税関係は生じません。

信託契約期間中の受益権移動(=受益者交代)の原因が「相続(=受益者の死亡)」であれば相続税の課税対象となります。「受益者の死亡にともなわない受益権の移動(受益者の変更)」について対価がなければ(適正な対価を負担せずに新受益者となった場合を含む)贈与税の課税対象となり、適正な対価があれば受益権売買として売主側は所得税の課税対象となります。

3.信託終了時の課税について

「受益者の死亡」を原因に信託が終了した場合、残余財産の帰属権利者が死亡を原因に所有権財産を取得したことになりますので相続税の課税対象になります。一方、受益者の存命中に受託者との合意により終了する場合は信託終了時の受益者に残余財産を帰属させるのが一般的ですが、既に受益権(信託財産)を持っていた受益者がそのまま所有権財産を持つので財産の移動はなく特に課税は生じません。