お知らせ

2024.03.14
  • 家族信託

家族信託の注意点

家族信託を検討する際に知っておきたい注意点をご説明します。

1.損益通算禁止による税務メリットを受けられない

信託不動産からの収支が1年を通じて赤字になった場合、その赤字はなかったものとみなされます。つまり、他の年間収支がプラスの収入と通算して利益を圧縮することができません。また、損失を翌年移行に繰り越すことができません。信託契約を複数に分けた場合も、それぞれの信託契約をまたいだ損益通算もできません。結果的に課税対象の所得が増え、所得税が通常よりも多く発生するリスクがあります。

2.信託財産からの収益があれば税務申告の手間がかかる

信託財産から得られる収益が年間3万円以上(計算期間が1年未満の場合には15000円以上)ある場合、受託者は信託計算書・信託計算書合計表を税務署に提出する必要があります。また、信託財産が不動産で、その不動産から収益が発生する場合、受益者は毎年の確定申告の際に不動産所得用の明細書の他に信託財産に関する明細書を別途作成して添付する必要があります。もし受益者が複数の信託契約を持っている、または信託財産と自己所有の不動産が混在する場合、それぞれの信託契約や所有形態に応じて損益を計算した明細書を作成し、提出する必要があります。

3.実務に精通した専門家が少ない

家族信託は新しい制度のため、十分に経験を積んだ専門家が少ないのが現状です。家族信託を利用するには、法律的な知識や解釈以外にも、税金に関する内容には税理士、農地の宅地転用には行政書士など、複数の専門家の関与が必要になることもあるため、幅広い相互ネットワークをもつ司法書士法人がおすすめです。信託登記手続きまでワンストップで対応できますし、成年後見制度の知識も豊富ですので、他の制度とも比較検討したうえで最善のプランを導き出せる可能性が高いです。

4.初期コストがかかります

家族信託にかかる初期費用は次のようなものになります。

  • 専門職のコンサルティング報酬
    (上述しましたように、対応できる専門家が少ないこともありコンサルティング報酬は高めに設定されています)
  • 家族信託契約書作成費用
  • 公証役場の手数料
  • 司法書士の登記手続き報酬
  • 登録免許税、登記事項証明書等の実費

上記を合算すると信託財産に入れる財産評価額(不動産の場合は固定資産税評価額)の1.2~2%くらいが初期費用総額の目安です。

ただし、成年後見制度との比較で考えますと、初期費用は高いですが、基本的に専門家への月額報酬(ランニングコスト)が発生せず、家族信託は長期にわたって続くことが想定されますので、トータルでみるとコストは低い傾向にあります。 因みに成年後見制度を利用した場合のランニングコストは次のようなものになります。

【家族が後見人になる場合】

後見監督人(任意後見監督人)が就くと月額1~2万円(年間12~24万円)程度の後見監督人報酬が発生します。

【専門職が後見人になる場合】

月額2~6万円(年間24~72万円)程度の後見人報酬が発生します。 また、もし何の争族対策もせず、将来の相続時に遺産争いが生じた場合には、弁護士費用が着手金として最低数十万円、成功報酬は獲得財産に応じて計算されるますので、数百万円になるケースもあります。また、遺産分割調停や裁判の場合、争いの期間が5~10年にわたることもあります。経済的負担に加えて精神的時間的労力的負担も相当大きなものになることもありますので、費用対効果を総合的に考えた場合に高いとは言い切れないと思います。 ご自身に合った家族信託契約を設計するために、ご検討の際は是非信頼できる専門家へご相談ください。