- 2024.03.15
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- 成年後見・任意後見
成年後見制度の概要。法定後見制度と任意後見制度の違い
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などのために、自分の財産を管理したり、治療や介護を受ける契約を結んだりする能力がない、または不十分な方を援助することを目的としています。寝たきりで外出できないという場合や、目が不自由で文字が書けないものの判断能力はあるといった方の場合は、この制度の対象者とはなりません。
成年後見制度は大きく分けて2種類あります。それは「法定後見制度」と「任意後見制度」です。両制度はご本人の権利や財産、生活を守るという目的は同じですが、異なる点があります。
(1)判断能力低下の「前」か「後」か。
法定後見は本人の判断能力の低下「後」にご本人や親族が家庭裁判所に申し立てをする必要があります。その後、家庭裁判所の審判が決定し開始されます。
対して、任意後見は契約なので、判断能力が低下してからでは基本的に利用することができません。契約は判断能力が不十分となる「前」に本人の意思によって締結し、本人の判断能力が不十分となった後に任意後見受任者等が裁判所に申し立て、審判が確定して契約の効力が発生します。
(2)後見人の権限
法定後見は、後見・保佐・補助によって権限の違いはありますが、家庭裁判所の審判によって決定され、代理権・同意権等の権利が後見人に与えられます。(保佐・補助については法律で定められた範囲で代理権・同意権の選択が可能です。) ただし、権限は法律により与えられたものであるため、一定の制限もあります。例えば、原則として相続税対策や積極的な資産運用はできません。成年後見人はあくまでも被成年後見人の財産を守ることを目的としており、増やすことや相続人の利益などは目的とされないからです。
これに対し、任意後見は契約なので基本的には両者の合意があれば契約内容は自由になります。相続税対策や資産の運用も任意後見人が行うことが可能です。
(3)取消権
取消権とは、例えば、本人が認知症で不必要な契約をしてしまう場合、その行為・契約を取り消しできる権限のことです。 法定後見の場合は取消権を与えられた範囲であれば取り消すことが可能です。(日用品の購入等については含まれません。)
しかし、任意後見には取消権をつけることができません。任意後見で対応するには限界がある為、任意後見を終了して法定後見の変更を考えないとならない場合もあります。
(4)その他
後見人の報酬については法定後見は家庭裁判所が決定するのに対し、任意後見は契約の中で報酬を決める必要があります。
法律に関しても法定後見は「民法」に定められているのに対し、任意後見は「任意後見契約法」に定めがあります。