実家の売却など、
不動産がご心配な方家族信託
家族信託とは、自分の老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法です。
信託銀行の取り扱う信託商品や投資信託(商事信託)とは違い、財産の管理や移転・処分を目的に家族間で行うもので、相続・扶養・後見・老後の生活の不安など様々な問題に適した信託制度といえます。
家族信託は信託契約の内容を原則として自由に定めることができるため、その活用方法には幅があります。
弊所では、自宅売却、アパート管理、後継ぎ遺言、事業承継など、様々な問題に適した信託をご提案することができます。
代表的な事例をご紹介します。
【家族構成】 Aさん、Bさん(Aさんの息子)
Aさんは3年前に妻に先立たれ、現在は持ち家に一人暮らし。週に数回介護ヘルパーさんに来てもらっていますが、若干認知症の恐れもあり、近い将来高齢者施設に入居したいと考えています。そこで自宅売却にあたって、息子Bさんとの間で、委託者兼受益者をAさん、受託者をBさんとして、自宅不動産を信託財産とする民事信託契約を締結することにしました。また信託契約の中で、信託監督人として司法書士に依頼をすることにしました。 受託者のBさんには、信託監督人の同意を得た上で自宅不動産を売却できる権限を与え、売却後に残った利益は、受託者のBさんからAさんへの銀行口座に送金させることになりました。
息子であるBさんには、自宅不動産の管理処分権限を与えるが、受益者のAさんに不利益なことをしないように、信託監督人である司法書士の同意を得なければ、勝手に不動産を処分できないようにしました。Bさんは、売却価格とそのタイミングを信託監督人と相談しながら決め、信託監督人は売却の時期や価格について精査した結果、問題が無ければ同意をします(売却の時点で、依頼人で受益者であるAさんが元気であれば、もちろんAさんの意向を最大限尊重しなければなりません)。Bさんは、自らが登記簿上の所有者(売主)として売却し、その売買代金から諸費用(不動産仲介手数料、信託監督人の報酬など)を除いて残った売却益を、年金受取や施設利用料等の口座引落に設定されているAさんのメインの銀行口座に送金しました。これにより、受託者のBさんが預かる財産が無くなるので、「信託財産の消滅」という信託の終了事由の発生により信託契約は終了します。
信託監督人である司法書士は、適正な財産管理と売却手続きが実行されたかを監督し、最終的に受益者であるAさんに対して、売却益の送金がされるところまできちんと見届けます。 自宅不動産のスムーズな売却のために家族信託を設定し、売却後の精算事務完了をもって信託が終了するような、不動産売却のための一時的な信託契約の例です。
【家族構成】 Cさん、Dさん(Cさんの息子)
Cさんは自分名義のアパートを持っており、そこからの収益で暮らしています。現在アパートの管理全般はCさんが一人で行っていますが、将来Cさんが認知症などで意思能力がなくなってしまった場合、賃貸借契約を結ぶことや、修繕工事をすることができなくなる可能性があり、財産を処分することもできず相続対策もできなくなります。
そこで、息子Dさんは自らが受託者となり、母であるCさんとの間にアパート管理に関しての民事信託契約を結ぶことにしました。この契約によりCさんが持つ財産の管理・運用・処分の権利がDさんに与えられ、委託者で受益者であるCさんは、それら財産からの利益を得る権利を持ちます。また、受託者であるDさんが受託者報酬を得ることでCさんの所得を減らし、Cさんの社会保険料などがお得になるという効果も期待できます。
このように民事信託契約を結んでおくことで、賃貸借契約の締結や、修繕工事あるいは財産の処分や売却なども、財産を管理する息子のDさんが手続きを行うことができます。
【家族構成】 Eさん、Fさん(Eさんの夫)、Gさん(Eさんの姪)
Eさんは60代の女性です。Eさん夫婦には子供がいません。 Eさんには親から受け継いだ土地があり人に貸していて、その賃料でEさん夫婦は生活しています。Eさんが亡くなったら、その土地はEさんの夫であるFさんに相続してもらいたいと思っており、そのような内容で遺言を作りました。しかしその後Fさんが亡くなった場合、Fさんの姉にその財産が行くことになります。先祖から引き継いだ土地なので、Eさんとしてはその土地が夫の親族のものになってしまうのは防ぎたいとの希望でした。
今回の事例では、先祖代々の土地があり、その土地の地代を 自分 ⇒ 夫 ⇒ 姪というように受け取れるようにすることがEさんのご希望でした。
Eさんの希望を実現するために、Eさんから姪のGさんに土地を家族信託します。
そうすると名義は形式的にGさんに移りますが、登記簿には信託で名義が移ったと記録されます。地代はEさんが今までどおり受け取れますし、Eさんが亡くなった時や、Eさんの夫であるFさんが亡くなった時も相続手続きは不要ですので、スムーズに地代を受け取る人の変更ができます。そしてEさんが亡くなった後は、夫のFさん、その後は姪のGさんという順番で、地代を受け取ることができます。
遺言では自分が亡くなったら誰に財産を渡すか指定できますがその次は決められません。 しかし、家族信託では、自分の次は夫、夫の次は姪・・・と何世代も先まで指定できます。 つまり家族信託を使えば「家督相続」が可能になります。
【家族構成】Hさん、Iさん(Hさんの息子)
Hさんは会社経営者です。ゆくゆくは後継者として長男のIさんへ会社の経営権を移したいのですが、現在株価が高く、さらに長男の育成中でもあるため、自身が元気な内は完全には任せられないと考えています。
そこで、Hさんが委託者兼受益者となり、自身が持つ自社株をIさん(受託者)に信託します。同時に指図権者を設定し、これをHさんとします。
その結果、株式の名義はIさんとなる一方で、議決権を行使する際は、指図権者であるHさんの指図に従って受託者たるIさんが行使することになります。そして将来Hさんの判断能力が低下した際は、指図権を消滅させ、指図を受けることなくIさんが議決権を行使することができます。さらにHさんが死亡した際は、信託を終了させ、Iさんが株式を完全な所有権として承継することができます。
事業承継は相続税対策と会社の経営権の承継、親族関係などが複雑に絡み合い、簡単にはいきません。信託だけではなく、種類株式や黄金株、一般社団スキームなどを組み合わせて効果的なスキームをご提案いたします。中長期戦になりますので、司法書士がしっかりと伴走し、最適な解決策を模索いたします。
費用
家族信託報酬基準表(税抜)
信託財産の評価額(※固定資産税評価額基準) | 報酬額(税抜) |
---|---|
~3000万円 | 金34.6万円 |
3000万円~1億円 | 1000万円ごとに 金5.9万円加算 |
1億円~10億円 | 1億円ごとに 金24.7万円加算 |
10億円~ | 376万円+応相 |
- 受益者連続型の信託契約の場合、上記報酬×1.5倍
- あわせて現金を信託する場合は評価額+信託する現金額にて報酬額を算出
- 出張料別途
<信託契約書作成報酬以外に必要な費用>
①信託による所有権移転登記費用
報酬 | 11万円(税抜) |
---|---|
登録免許税 | 土地:固定資産税評価額×0.3% 建物:固定資産税評価額×0.4% |
- 上記以外に元所有者(委託者)に住所変更等ある場合は別途1万円(税抜)
- (根)抵当権の設定されている不動産を信託する場合は別途ご相談ください。
②公正証書作成費用(公証役場手数料)※公正証書にすることは法的義務ではありません
信託する財産の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円~200万円以下 | 7000円 |
200万円~500万円以下 | 1.1万円 |
500万円~1000万円以下 | 1.7万円 |
1000万円~3000万円以下 | 2.3万円 |
3000万円~5000万円以下 | 2.9万円 |
5000万円~1億円以下 | 4.3万円 |
1億円~3億円以下 | 4.3万円 上記に5000万円ごとに1.3万円を加算 |
3億円~10億円以下 | 9.5万円 上記に5000万円ごとに1.1万円を加算 |
10億円以上 | 24.9万円 5000万円ごとに8000円を加算 |
- 上記報酬に証書代と印紙代が加算されます。
- 公証人に出張を依頼する場合は別途出張料と交通費が加算されます。
認知症の家族がおり、
遺産分割が行えるかご不安な方成年後見・任意後見
成年後見制度
成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力が不十分な人が、経済的な不利益を受けることが無いように、支援する人をつける制度で、「法定後見制度」と「任意後見制度」の二つに区分されています。
近年は、本人の親族が後見人に就任するよりも、親族以外の第三者である司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門職が後見人に就任することが増えています。中でも、親族以外の後見人としてもっとも多く選任されているのが、登記の専門家である司法書士です。
認知症・知的障害・精神障害等の精神上の障害によって、すでに判断能力が不十分な人は、法定後見制度を利用することができます。これは、家庭裁判所が選任した支援者が本人の財産管理の保護や、介護保険などのサービス利用契約についての判断などをを行う制度です。
法律によって支援者を定めることから、この支援者は法定代理人という位置づけになります。 この法定後見制度利用の要件である判断能力の有無や程度については家庭裁判所が判断し、その程度によって後見・保佐・補助に区別されます。
弊所では、申立書類の作成援助から申立後のフォロー及び後見人の就任まで、トータルにサポートいたします。
いくつか代表的な事例をご紹介いたします。
【家族構成】Jさん、Kさん(Jさんの娘)
Jさんは数年前から老人保健施設に入所していますが、判断能力、記憶力、計算能力などが著しく低下してしまっています。収入が年金しかなく、預貯金が心許なくなってきたため住んでいた自宅不動産を売却しようと不動産屋さんにしたところ、家族との意思疎通も困難な状況なので、司法書士に相談の上、成年後見の申し立てをすることになりました。
娘であるKさんは申し立てを司法書士に依頼し、成年後見人の候補者にはKさん自身がなることにしました。家庭裁判所による調査および主治医による精神鑑定の後、特に問題がなかったので、約3ヶ月後、Kさんが成年後見人に選任されました。
Kさんは成年後見人の仕事として、入所施設において看護や介護が適切に行われているか十分に配慮を行います。必要があれば、他の施設や介護サービス提供業者との契約を行います。成年後見人の仕事には、直接看護や介護をすることは含まれません(子として母親の世話をすることとは、別の話です)。その他、施設費用等の支払い、預貯金・土地等の財産管理、税金・公共料金等の支払い手続きをします。
司法書士等が成年後見人に就任した場合にも、同様にJさんの生活をサポートしていきます。
【家族構成】Lさん、Mさん(Lさんの息子)
Lさんはグループホームに入居しています。日常会話はスムーズで、食事、排泄、身支度等は自分でできますが、炊事、生活事務、財産管理等は困難な状況にあります。
Mさんは、申し立てからすべてを司法書士に依頼することにしました。申し立て後、鑑定がなされ4ヵ月後に司法書士が保佐人に選任されました。本人の能力としては、炊事、衣食生活管理、財産管理等はできないが、日常会話、食事、排泄、身支度等は問題がなく保佐類型と考えられ、裁判所もそのように判断しました。
保佐人は定期的にグループホームを尋ね、本人の様子を確認します。グループホームの介護が適切に行われているか見守り、話し合いをして相談相手となります。
財産管理としては、自宅不動産管理、火災保険等の損害保険契約締結・管理、税金・保険の申告・納付手続き、介護認定更新、介護保険料払込手続き、施設費用支払い、その他諸費用支払い、預貯金管理、郵便物管理等を行います。
【家族構成】Nさん、Oさん(Nさんの母親)
Nさんは軽度の知的障害を持っています。養護学校を卒業後、母親であるOさんと一緒に暮らしながら、地域の小規模作業所に通って働いていました。
収入は、年金と作業所の手当を含めて月8万円くらいですが、Nさんは金銭の管理をすることが苦手で、入ったお金をすぐ使ってしまい、足りなくなったら消費者金融から借りるということを繰り返してしまいます。そこで困ったOさんは、補助の申し立てを司法書士に依頼することにしました。
Nさんは日常生活のほとんどを援助なしに行うことができ、金銭の管理だけが不安ですが、誰かが代わって管理するという必要性もないようです。これ以上借金を増やさないようにするため、高額の買い物や借金をすることについては補助人の同意を必要とする、という補助の申し立てをし、補助人候補者にはOさんがなることにしました。
家庭裁判所によって、Nさんの意向の確認、家族や補助人候補者の調査がなされ、約2ヶ月に補助開始が決まりました。
Oさんは補助人として、必要があればお金の使い方などを指導します。もし補助人であるOさんの同意を得ないで借金をしてしまって、返済できないような状況になったら、借金(金銭消費貸借)を取り消します。
費用
成年後見申立 報酬 100,000~200,000円
(財産の種類と規模で多少変動します。実費として予納金などが別途必要です)
就任申立時 報酬 50,000円
(実費として印紙代などが別途必要です)
任意後見制度
任意後見制度とは、本人に判断能力がある間に、将来自分の判断能力が低下した場合に任意後見人として生活を支える人を、自分で選んでおく制度です。
法定後見制度では本人の意思にかかわらず家庭裁判所により後見人が選ばれるのに対し、任意後見制度では自分で後見人を選べ、お願いする内容も自分で決めることができます。
そして本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと、本人を代理して契約などをします。
弊所では、ご存命中には財産管理等委任契約や見守り契約・遺言書の作成から、お亡くなり後に発生する事務を代理する死後事務委任契約まで、将来の不測の事態に備えた様々なサポートをご用意しています。
具体的にどのような契約になるのか、いくつか実際の契約書から抜き出してご紹介いたします。
財産管理等委任契約は、判断能力は低下していないものの病気などで身体が不自由になった時に、第三者に自分の財産や生活を守ってもらうための契約です。
財産管理等委任契約には特別な決まりはなく、代理人やお願いすることについて、自分で自由に決めることができます。たとえば、
- 預貯金など金融機関の口座の管理
- 生命保険などの保険の支払い請求および受領などの手続き
- 日用品の購入、その他日常生活に関する物品の購入
- 定期的な収入(家賃、地代、年金その他社会保障給付等)の受領および手続き
- 定期的な支出(公共料金、保険料、税金、老人ホーム利用料等)の支払いおよび手続き
- 証書等(登記済権利証、実印、銀行印)その他これらに準ずるものの保管および事務処理に必要な範囲の使用
といったことを、財産管理等委任契約でお願いすることができます。
財産管理等委任契約はいつからでも開始できるので、どのような場合に契約が開始するかを含めて、事前に決めておくことができます。
また、財産管理等委任契約は任意後見契約とセットで締結しておくことでメリットが大きくなります。任意後見が始まるまでの間は財産管理等委任契約で見守り、認知症などが発生し判断能力が低下したときに任意後見契約に切り替え、切れ目のなくご契約者本人を見守っていくことができるからです。
任意後見契約を締結しても、その後本人との接点がなくなってしまったら、本人の判断能力の低下を任意後見受任者が知ることができない可能性があります。そこで任意後見契約とともに、「任意後見受任者は、本人と2週間に一回ごとの電話連絡および3か月ごとの面談により、本人の生活状況及び身心の状況を見守り、判断能力が低下した場合には速やかに家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てを行う」といった内容の「見守り契約」を締結しておくと安心です。
見守り契約とは、任意後見がはじまるまでの間、判断能力が十分あるうちから契約者ご本人と定期的に連絡をとり、健康状態や生活状況を確認し、任意後見が必要な時期を判断するための契約です。
お客様には遺言内容の決定をしていただきます。「不動産は配偶者に」「預金は長男に」など、ご希望の内容をお伝えいただければ、ご希望をもとに司法書士が遺言の案文を作成し、お客様へご提案いたします。どのように財産を分配すればいいか分からない、迷っているという場合には客観的な立場からアドバイスをさせていただくことも可能です。
遺言の内容を実現する人のことを遺言執行者といいますが、親族で適切な人がいない場合や不安なので専門家へ任せたい場合は弊所が遺言執行者へ就任することも可能です。
≪公正証書遺言書作成の流れ≫
- 当社とお客様との事前のご相談・打ち合わせ
- 相続人調査及び財産調査
- 公正証書遺言書の原案作
- 公証人との打ち合わせ
- 公正証書遺言書の内容確認
- 公正証書遺言書完成
種別 | 基本報酬 | 実費 | 備考 |
---|---|---|---|
相談 | 初回無料、 2回目から30分8,000円 |
土日祝時間外も 相談可能(要予約) |
|
自筆証書遺言書作成 | 80,000円 | 戸籍取得費用等 | |
公正証書遺言作成 | 80,000円 | 公証人費用等 | 証人1名分含む |
遺言執行 | 300,000円から | 登録免許税等 | 詳細はご相談 |
死後事務委任契約とは、委任者が受任者に亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等についての代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。死後事務委任契約では、遺言書で決めることができない葬儀や永代供養、家の片付けなど、様々なお手続きを代行できるよう決めておくことができます。
弊所では、死後事務委任契約を結ぶことにより、ご依頼主様が亡くなられたときに必要な手続きを家族に代わっておこないます。
≪すぐに行う手続き≫
- 役所への死亡届の提出・火葬許可申請書の提出
- 病院・医療施設の退院・退所手続き
- 葬儀・火葬に関する手続き
- 埋葬・散骨に関する手続き
- 年金・健康保険・介護保険などの資格抹消手続き
- 勤務先企業・期間の退職に伴う各種手続き
≪落ち着いたら行う手続き≫
- 不動産契約の解約・住居引き渡しまでの管理
- 遺品整理
- 公共サービス(電気・ガス・水道等)の解約・精算手続き
- 行政機関発行の資格証明書(運転免許証・パスポート・印鑑登録等)の返納手続き
- 住民税や固定資産税の納税手続き
≪必要に応じて行う手続き≫
- ペットの世話引き継ぎ
- 関係者への死亡通知
- SNS/メールアカウントの削除
費用目安
- 契約時:
- 公正証書での契約書作成 100,000円(税抜)
死後事務委任契約を公正証書にて作成します。契約締結にかかる費用のほかに公証役場へ支払う手数料が別途必要となります。
- 執行時:
- 死後事務報酬 200,000~500,000円前後(ご依頼内容により変動)
ご依頼主様が死亡時に、必要な諸経費および報酬(執行費用)をご用意いただきます。
葬儀代などの諸経費は別途必要となります。
親が認知症になる前に
対策をしたい方遺言
遺言書を作成するには、遺言時に遺言能力を備えていることが必要となります。
遺言能力とは遺言の内容を理解しているか? 遺言が実現された結果どうなるか?という事をきちんと理解できる能力のことをいいます。
認知症高齢者の遺言は、この遺言能力の有無で争いが起こることがあるため注意が必要です。つまり、遺言が無効ではないか?と思われてしまう可能性があるのです。
とはいえ、認知症の疑いが少しでもある方は全く遺言を作成出来ないという訳ではありません。遺言の内容や、ご本人の症状によって作成できる場合もあります。このような場合は慎重な判断が必要になりますので、専門家にきちんと相談して対策を立てることが必要です。
自筆証書遺言は全て手書きで紙に書き記す遺言書のことで、最低限の紙、ペンと印鑑があれば、誰でも気軽に作成が可能で費用もかからないものです。そのため、遺言書としては多く利用されていますが、法律で決められた要件を満たしていない、書き間違えがあるなどの理由で遺言書として無効になることがとても多いので注意が必要です。
令和元年7月1日より、自筆証書遺言の法改正が行われ、改正前は、全て手書きで行う必要がありましたが、今回の法改正により、全て手書きという部分に緩和措置が取られました。上記措置としては、財産目録には署名押印が必要ですが(裏表に記載されている場合は、その両面に必要)、署名押印さえ行えば、自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成することができるようになりました。例えば、パソコン作成、通帳の写し及び、不動産登記事項証明書を目録として使用することが可能となり、高齢者や経験のない個人でも遺言書作成が身近に感じられるようになりました。しかし誰でも作成しやすくなった一方で、偽装や認知症の方への強要が増加することも懸念されており、そのようなことが起こると、相続人間での紛争等も起こりうる可能性もあります。
公正証書遺言は、公証役場で証人2名以上立会いのもと作成するもので、法的効力があります。公正証書遺言があれば、相続争いが未然に防げることが期待できます。しかし、実は裁判で無効になることもよくあるので、絶対ではありません。
公証役場に直接依頼することも可能ですが、公証人は元裁判官や元検察官が多く、はっきり言ってしまえば役人上がりの上から目線な方が多いです(いい公証人の方も稀にいます)。そういった公証人に当たってしまうと、自分の気持ちが上手く伝えられなかったり、杓子定規な内容の遺言書になってしまいます。弊所では単に財産の分配だけでなく、遺言を書かれる方がどのような考えに基づいて書いているのか、何を心配しているのか、まできちんと形にして残すことで、争いが起こる余地を極力減らし、気持ちの伝わる公正証書遺言の作成をお手伝いします。
一般危急時遺言は、遺言者が病気やその他の理由によって死亡の危機に瀕しているなど、緊急性がある場合にのみ認められる特別な方式の遺言が特別方式遺言です。弊所は一般危急時遺言に対応している数少ない事務所です。
一般危急時遺言が認められるには、以下のとおりの要件を満たす必要があります。
- 疾病(病気)その他の事由により、遺言者に死亡の危急が迫っている
- 証人3人以上の立会がある※証人になれるのは、以下に該当しない人です。
- 未成年者
- 推定相続人、受遺者、それらの配偶者と直系血族
手続は次の通りです。
- 証人の1人に言葉で遺言の趣旨を伝える
- 遺言の趣旨を聞いた証人がそれを書いて 遺言者と他の証人に読み聞かせるか、書いたものを閲覧させる
- すべての証人が、筆記内容が正確であることを承認して、 署名押印する
なお、一般危急時遺言は、効力発生のために一定の手続きが必要です。
遺言が行われても、そのまま何も手続きをしない場合には効力が発生しません。
証人の1人または利害関係人が、遺言が行われた日から20日以内に家庭裁判所に対し、一般危急時遺言の確認請求を行うことが必要です。
さらに、遺言者が死亡した後には、効力が発生した一般危急時遺言について、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。
一般危急時遺言の確認と検認は別の手続きなので、一般危急時遺言の確認をして遺言としての効力が発生しても、検認は別途必要になり、検認をしないと科料の制裁を科される可能性もあるので、注意が必要です。検認受ける場合には、遺言の開封前に家庭裁判所に検認申立を行います。
また、一般危急時遺言が行われても、その後遺言者が危急状態から回復した場合には、遺言者は普通方式で遺言することができるようになるので、一般危急時遺言を認める必要性がなくなります。そのため、遺言者が普通方式遺言を行うことができる状態になってから6ヶ月間生存したときに、一般危急時遺言は自然に効力を失います。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現する為に必要な行為や手続をする人のことです。遺言執行者は相続人の代表者として、相続開始後に財産目録を作成したり、預貯金や不動産の手続など遺言の執行に必要な一切の行為をする権限があります。
遺言執行者がいない場合相続人で執行を行うことになります。しかし相続人全員の署名捺印や印鑑証明書が必要になるなど、手続が非常に面倒なものになってしまうことがあります。また遺言の内容に不満がある相続人がいると遺言の執行に協力してもらえないようなケースもあります。
遺言執行者を指定しておけば、相続人を代表して遺言の内容を実行してくれるので、相続人の負担が軽くなります。また遺言執行者は遺言の執行に必要な手続を行う権限をもっているので、遺言に不満がある相続人の協力を得る必要がなく、相続手続を素早く行うことができます。
遺言執行者の指定は、相続発生後、家庭裁判所に選任申立てをすることもできますが、遺言作成時に遺言執行者を指定しておくことが望ましいでしょう。